Majic Ship – Majic Ship (1970)
高校の同級生によって結成されたMajic Shipは、耳をつんざくようなハード・ブルースから美しいアシッド・フォークまで、サイケデリアの様々な素材からなるショーケースのようなアルバムを残している。忘れ去られたグループの多いシーンだったが、当時の唯一のオリジナル・アルバムである『Majic Ship』は80年代からコンスタントにリイシューされ続けている名盤だ。
ファズギターの炸裂する「Sioux City Blues」やヘヴィな「Too Much」は、サイケとハード・ブルースの垣根が曖昧だった当時のロックの典型を示している。だが「Wednesday Morning Dew」のアコースティックな美しさや、「We Gotta Live On」のコーラスがもたらすポップな高揚感には、彼らの確かな実力が表れている。シンプルかつファンキーなブギの「Free」で聴けるPhil Polimeniのギター・ソロもまた見事だ。
同時期の多くのガレージ・バンドとは異なりアルバム・トラックのほとんどが、上記のようなメンバーによる多彩なオリジナルで占められているが、「Down By The River / What It's Worth」はNeil YoungとStephen Stillsのカバーからなるメドレーだ。Youngの激しいギターワークとBuffalo Springfieldのコーラスを印象的に絡めた11分の演奏には、原曲へのリスペクトにほんの少しの野心が添えられている。