Art Blakey & The Jazz Messengers – Free For All (1965)
1964年の2月、290対130という大差で公民権法案が米国の下院を通過し、激しい討論が合衆国のいたるところで巻き起こっていた時、アルバム『Free For All』は生まれた。50年代のクインテット・スタイルから脱皮し、トロンボーンを加えた3管編成を確立していたThe Jazz Messengersは、史上最も激しく象徴的な作品を作り上げた。
もちろんそれは名手Wayne Shorterの手腕(そもそもCurtis Fullerを引き入れるようにリーダーのArt Blakeyに提言したのも彼だった)によるところも大きい。『Free For All』はタイトル曲に代表されるように、Shorter、Fuller、Freddie Hubbardによるホーンのバトルと、Cedar Waltonの表情豊かなピアノが重厚なサウンドを生み出している。しかし、それらは全てBlakeyのけたたましいドラムを中心に回っているのだ。ミディアム・テンポのハード・バップ「Hammer Head」や、HubbardがClare Fischerを編曲したボサノヴァ「Pensativa」といった幅広いスタイル、そしてメンバーの個性にいたる様々な要素が、彼のビートによって見事に統一感を保ち続けている。
ベーシストReggie Workmanの導入から始まる「The Core」は、続くShorterのフリーキーなサックスも相まって、まるでJohn Coltraneのナンバーのようだ。タイトルはジャズ音楽の核心に迫ろうとするHubbardの意志と、人種平等会議(Congress Of Racial Equality)の略称をかけたダブル・ミーニングだった。
レコードから放たれる一音一音が、まるで自由を渇望するかのように響いてくる。アメリカ黒人が公民権の獲得を目前にしていた時代に本作が録音されたことは、決して単なる偶然ではない。