Sam & Dave – Hold On, I'm Comin' (1966)
スタックス・レーベルお抱えのソングライターだった若きIsaac HayesとDavid Porterは、1965年に初めてSam & Daveと組んだ。ハイテナーのSam MooreとバリトンのDavid Praterからなるこのコンビは、たった二人で教会の歌唱隊にも迫るような掛け合いを見せる気鋭の歌手だった。
Hayes & Porterは二人のスタイルに合わせてあえてラフで気軽な雰囲気の曲作りを心掛けた。その最たる例はR&Bチャートのトップに輝いたタイトル曲で、これを歌っているSam & Daveの姿はまるで物語に遅れて登場するヒーローのように堂々としていて、輝いている。ソウル史に残る素晴らしいリフとバックの演奏はゴスペルを強く意識してはいるが、歌詞のメイン・フレーズそのものは偶然の産物だった。〈Hold On, I'm Comin'〉という言葉は、仕事中にトイレにこもっていたPorterが、外から急かすHayesに対して投げかけた何気ないセリフからヒントを得たのだという。
「I Take What I Want」は同様のリフをThe M.G.'sのSteve Cropperがファンキーなギター・サウンドで表現している。「You Don't Know Like I Know」は「Hold On, I'm Comin'」に先んじてR&Bチャートの7位となった名曲だ。「It's A Wonder」の飛び跳ねるようなグルーヴや、ゆったりしたバラード「I Got Everything I Need」における荒々しいシャウト、全てがまさにサザン・ソウルのお手本だ。
ラフであるがゆえに生々しさが迫るこのアルバムは、モータウンと双璧を成すスタックス・アトランティック・ソウルの手法を示した。影響力のある傑作である。