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Steve Marriott – Marriott (1976)

 Samll Facesを脱退した1969年から6年間、Steve MarriottはHumble Pieのギタリストとしてハードなブギをかき鳴らしてきた。だが、Pieが解散した翌年のソロ・アルバム『Marriott』は、「East Side Struttin'」のレイドバックした心地いいリズムで幕を開ける。サウンドそのものはハードだが、意外にもその雰囲気はPieの荒々しさより、かつてMarriottと袂を分かったFacesのそれをどこかほうふつとさせる。
 英国と米国それぞれのミュージシャンと録音された『Marriott』は、もともと2枚の別のレコードとして発表する構想だったが、結果的にイギリス・サイドのA面とアメリカ・サイドのB面に分かれた1枚のLPとなっている。ベースにはPieのGreg Ridleyが参加し、「Lookin' For A Love」では彼のソロがフィーチャーされている。「Midnight Rollin'」はIan Wallaceのタイトなドラムに乗せてMarriottが情熱的な歌とギターを爆発させ、「Wam Bam Thank You Ma'am」ではSmall Faces時代の下品で粗野なロックンロールが蘇っている。
 西海岸のセッションマンが加わる形で行われたアメリカ・サイドのセッションは、厚みのあるホーンとコーラスを交えたソウルフルな展開だ。Marriottのファンキーな歌い手としての才能を示す「Are You Lonely For Me Baby」や「Late Night Lady」は、David Fosterのキーボードが実に洒脱な味を加えている。「Early Evening Light」でストリングをバックにAORを歌う姿もまた新鮮だ。
 Marriottは本作のイギリス・サイドのメンツとともにソロのツアーを始めつつあったが、折しも本国ではSamll Facesを再結成するプロジェクトが立ち上がり、彼はそちらの活動へ注力していくこととなる。Marriottが米国に根をおろしていたら、ともすれば本作の延長のようなアルバムも生まれていたのかもしれない。