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dr_kobaia
Les McCann Ltd. – The Shout (1960)
さて、ジャズ・ピアノ界のソウルマンLes McCannの登場だ。McCannは端的に言えば、西海岸きってのゴスペル感覚と外連味の人である。最初のライブ盤となった『The Shout』には、彼がいかに豊かな想像力とショーマン・シップを持った人物だったかが、あますことなく詰め込まれている。
McCannはステージに上がるやいなや、スタンダード「But Not For Me」を軽快なテンポとタッチでたぐり、曲の後半では長い沈黙や「Sonnymoon For Two」のフレーズを大胆に織り交ぜながら、まるでゴスペルのような熱狂うずまく展開を聴かせてみせるのだ。しかし忘れてはならないのは、この曲は当時クール・ジャズの代名詞のようなナンバーだったことである。John Coltraneはこの曲を、本作の同年に複雑なコード・チェンジを駆使して録音することで、ジャズ・ファンを驚かせることになるのだが、本作におけるMcCannのプレイもそれと同じくらい不敵なアレンジと言えるだろう。
McCannのピアノは、バラード「A Foggy Day」でもシンプルな「C Jam Blues」でも、曖昧さのないタッチで観客の感性を刺激し続けている。「The Shout」ではタイトル通りのゴスペル(かなりカリカチュアされている)と、ラストのLeroy Vinnegarのしっとりとしたベース・ソロの対比がなんとも粋に決まっている。そして、Ron Jeffersonのパワフルなドラミングは、「A Night In Tunisia」で最高潮をむかえていく。
McCannはそのソウルでもっぱら後年のヒップホップ世代に高く評価された。だが、この底抜けの明るさはすべてのジャズ・ファンに必要とされているものでもある。