Fleetwood Mac – Mr. Wonderful (1968)
かつてJohn Mayallの門下生だったPeter Green、John McVie、Mick Fleetwoodの3人に、Elmore JanesのフォロワーであるギタリストのJeremy Spencer(彼の場合、もはや狂信者であると言ってもいい)を加えたのが、オリジナルのFleetwood Macである。アメリカのチャートにも登場したファースト『Fleetwood Mac』と、イギリス国内で1位を獲得した名曲「Albatross」の発表に時期を挟まれた『Mr. Wonderful』は、確かに爆発的ヒットを飛ばしたアルバムではない。とはいえ、ジャケットのインパクトとその上質な内容をもって、初期Macの作品としてやはり無視するわけにはいかない一枚といえるだろう。
前作との違いは、なんといってもChristine PerfectやDuster Bennett、そしてJohnny Almondをはじめとしたホーン・セクションが加わった厚みのあるブルース・サウンドだ。冒頭の「Stop Messin' Round」の賑やかなリフは彼らの当時の勢いをそのまま象徴するようである。十八番であるハイテンポなブギー・ナンバーも、「Evenin' Boogie」で健在だ。
アルバム中、実に4曲が全く同じイントロ(ブルーム調のギター)で始まる。「Dust My Broom」と「Doctor Brown」はいずれも古典のカバーだが、後者のオリジナルはBuster Brownによるもので、もともとブルーム調の曲ではなかった。Spencerはまるで全てのブルースは3連のリフで解釈できる、と言わんばかりに挑発的にギターをかき鳴らしている。
『Mr. Wonderful』の時代はバンドの最初の転換期となった。直後に発売された「Albatross」は彼らの脱ブルース路線の最初のきっかけとなった曲であり、本作に参加したPerfectは後に正式なメンバーとして加入し、ポップ・ロック時代のMacに大きな貢献をもたらすことになる。