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Odin – Odin (1972)

 イギリスとオランダ、そしてドイツのメンバーが集まってできたOdinのオリジナル・アルバムは本作のみだが、ギターとオルガンが織りなすこの重厚なアンサンブルのルーツを辿りたいと思うならば、オリジナルのレパートリーをまだ持ち合わせていなかった頃のシュヴァインフルトでのコンサートを聴く必要がある。カバー曲で埋め尽くされたセットリストには彼らの音楽の原点が散りばめられていて、本作を気に入った人ならきっと興味をそそられるに違いないからだ。
 Neil Youngの攻撃的なロック・サウンドはRob Terstallのギターに、King Crimsonのびりびりとした緊張感はバンドの持ち味であるタイトなリズムにヒントをもたらした。そして何よりもFrank Zappaの持つ外連味にあふれたジャズ・ロックの与えた影響は決定的で、確信犯的なヴィブラフォンの音色が印象的だった「Tribute To Frank」が、やはり彼に捧げられたものであったことを人々は改めて確信することができた。「Turnpike Lane」のイントロのドラムがRon Selicoのものを意識しているのは明らかだし、コーラスやブルージーなギターもまたしかりだ。
 「Life Is Only」は彼らのもう一つの持ち味であるハード・プログレの名演で、硬質なTerstallのギターとJeff Beerのテクニカルなオルガンが見事に絡み合う。「Gemini」ではそうしたサウンドに、漂うようなサイケの恍惚感がさらに加わっている。アート・ロックの雄がひしめくヴァーティゴ・レーベルらしい質実剛健な作品である。