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Babe Ruth – First Base (1972)

 イギリス本国では無視され、海を越えたカナダでは熱烈に受け入れられたBabe Ruthの『First Base』は、ジャズからクラシック、果てはEnnio Morriconeのマカロニ・ウエスタンに至る様々な要素を吸収して生まれた傑作だ。ロンドンの王立音楽アカデミーで古典の作法を学んだAlan Shacklockは、パワフルな女性ボーカリストJenny Haan、ベースのDave Hewittらとともに自身のバンドShacklockを結成した。バンド名はやがてアメリカ野球の大物の名前を戴いたBabe Ruthに改められたが、本作のジャケットを飾るRoger Deanのアートワークは無国籍そのもので、これはある意味彼らの音楽性にうまくハマっているともとれる。
 後々にはシンセサイザーを導入した豪華なアレンジも花開いてゆくが、本作の魅力は、ファンキーなサックスを取り入れて大ヒットしたハード・ロック「Wells Fargo」が象徴している。Shacklockのライティングは西部劇に強いインスパイアを受け、特に「The Mexican」は映画『夕陽のガンマン』のテーマと、緊迫感に満ちたプログ・ロックのアンサンブルが活きた名曲である。アコギのイントロからHewittの硬質なベースに移る演出も、なかなかに外連味があってクールだ。
 Dave Punshonのエレキ・ピアノはFrank Zappaの「King Kong」のジャムにジャズの生命力を与えた。また、冒頭で触れたShacklockの音楽的素養は「The Runaways」における合奏のアプローチの背景になっている。