Alice Cooper – Love It To Death (1971)
かつては〈Alice Cooper〉という名前は、Marilyn Mansonのように、Vincent Furnierのステージ・ネームであると同時に彼のバンドの名でもあった。Frank Zappaの立ち上げたストレート・レーベルからバンド体制で発表された初期のアルバムは、サイケデリックの残り香を放ちつつも良質なグラム・ロックを展開していたが、チャートでは苦戦している。初めてBob Ezrinがプロデュースを手掛けた本作は、後のハード・ロック路線への重要な布石となったアルバムであり、彼らにとって初めてのヒット作となった。
日本盤ではアルバム・タイトルにもなった重要曲「I'm Eighteen」は、鬱屈としているティーンエイジャーのための歌で、アメリカとカナダでスマッシュ・ヒットになっている。モラトリアムの中で醸成していく、思春期特有の言葉にしがたい感情を見事に代弁したCooperは、たちまち若者たちのカリスマになった。だがなにより恐ろしいのは、この一連の動きさえも後の「School's Out」の大ヒットの予行演習に過ぎなかったということだ。
「Caught In A Dream」や「Is It My Body」はサウンドに余計なてらいのないストレートなハード・ロックだが、ヴードゥーの儀式をほうふつとさせる「Black Juju」のような、ぞっとするステージ・パフォーマンスのために書かれたナンバーも存在している。ジャケットとは裏腹に、アルバムの最後は底抜けに明るい「Sun Arise」で締めくくられる。
アートワークに関してはひと悶着あった。ストレートを買収したワーナー・ブラザーズ盤のジャケットではCooperの右手が修正されているが、これは〈彼の親指がペニスのように見える〉というくだらない理由によるものだ。笑い話の域は出ないが、レコード・コレクターにとってはプレスを見極めるための語り草となった。