Thee Oh Sees – Carrion Crawler / The Dream EP (2011)
ローファイ・ロックの最高峰Thee Oh Seesの歴史は意外にも長く、かつそのルーツは多岐にわたっている。その実、フロントマンであるJohn Dwyerが音楽活動を始めたのは90年代後半で、あまつさえ初期は宅録でアコースティック・ギターを爪弾いていたというのだから、人は変わるものだ。
ミドルテンポだが常軌を逸したブルース・ナンバー「Carrion Crawler」でアルバムは幕を開ける。「The Dream」は強烈なリフと奇妙なファルセットが相互に作用する7分間のサイケデリック・チューンで、サンフランシスコのライブ盤ではパワーとスピードが格段に上がっている。そして意外な選曲として特に目を引くのが、初期Canのカバー曲である「Soul Desert」だ。オリジナルはMalcolm Mooney(最も早くブルースから脱却したシンガーの一人だ)が呪詛のように言葉をリフレインする国籍不明の曲調だったが、Dwyerはそれを皮肉にもブギーに再解釈するという挑戦的な荒業を見せている。
Dwyerのギターは一見するとフリークアウトしているが、彼の音楽の根底にあるのは盤石なブルースである。ライブでは口からヨダレをまき散らしながら狂人のように頭を振り続ける男だが、スタジオでは時にシンセやホーンを利用して確信犯的なサイケデリック・サウンドを作り上げる。『Carrion Crawler / The Dream EP』は、同世代のあらゆるアングラ嗜好者たちに、2010年代のガレージ・ロックの最適解を提示した。数あるThee Oh Seesのカタログの中でも真っ先に聴くべき傑作だ。