Ballin' Jack – Ballin' Jack (1970)
グランジを生んでロックの聖地になる前は、シアトルはJimi Hendrixという天才を生んだ町だった。同市の出身でありHendrxと交流のあったRonnie HammonとLuther Rabbが、彼に触発されてロックバンドBallin' Jackを結成したのはごく自然なことだろう。そんなBallin' Jackのファースト・アルバムは、まるでハードロックのような佇まいのジャケットに身を包んでいるが、Hammonのタイトなドラムや、Rabbのソウルフルなボーカルとベースが冴える70sロックの秘宝的存在だ。
同時期のBlood, Sweat And Tearsのようなブラスロックや、ヨーロッパ系統のジャズプログレとは一線を画したそのサウンドは、ジャズやロックというよりファンクのそれに近いと言える。「Found A Child」の印象的なGlenn Thomasのカッティング・ギターは、後にYoung MCの「Bust A Move」でサンプリングネタにもなった。Thomasは「Super Highway」でもHendrixが乗り移ったようなギタープレイを聴かせてくれる。
決してファンク一辺倒ではなく、ブラスバンドとしての強みが大きく活かされているのも確かだ。メンバーがニューオリンズのジャズバンドになりきった「Ballin' The Jack」の遊び心や、マルチ・プレイヤーであるJim Coileのフルートをフィーチャーした「Carnival」も聴きものだ。
HammonとRobbは、Ballin' Jackの解散後にファンクバンドWarに参加する。Coileはラテンジャズに傾倒し、Sonandoに参加するが2019年に事故で急逝してしまった。