Art Blakey – A Night At Birdland (1954-6)
本作における〈夜〉とは、偉大なるThe Jazz Messengersの結成前夜の事でもある。本作の録音メンバーには、当時の時点で大ベテランだったArt BlakeyとCurly Russellはもちろん、後にMessengersの頭脳として主要メンバーとなるHorace Silver、いわゆる〈5000番台〉にすでにリーダー作を出していた気鋭のLou Donaldson、そして若き天才Clifford Brownというこれ以上ない布陣である。Brownの死によって、ハードバップの歴史の中で早々に再現不可能なバンドとなってしまった彼らの演奏は、新しい音楽を作らんとする熱気に包まれている。
「Split Kick」でBrownが見せる感動的でメロディアスなソロ、Charlie Parkerの名曲である「Now's The Time」や「Confirmation」におけるDonaldsonの威風堂々たる振舞いは、ジャズにおける古典の吸収とオリジナリティの発散を見事に体現している。4曲ものオリジナルを提供して貢献しているSilverは、「Quicksilver」の両バージョンにおいてスピード感とグルーヴにあふれるピアノソロを聴かせている。
場の支配がスリリングに転換するのもライブの醍醐味である。穏やかなバラードの「Once In A While」では、優しいメロディを奏でるBrownがステージを包み込んでいるが、「A Night In Tunisia」では一転してBlakeyが主役として躍り出ていく。彼の長いキャリアの中で幾度となく録音された曲だが、初期の段階ですでに〈ドラマーの曲〉としてこの曲をモノにしているのだ。
尽きることないソロのアイデアに応えるように観客が盛り上がっていく様子も痛快だ。この貴重なライブ盤は、ハードバップの誕生という歴史的瞬間の追体験をあらゆる人にもたらしてくれる。