Duke Ellington feat. Jimmy Blanton – Solos, Duets And Trios (1990)
RCAやブルーバード・レーベルにおける、Duke Ellingtonの小規模編成による録音をコンパイルした本作は、ビッグ・バンドのリーダーではないいちピアニストとしての彼のセンスを感じるにはうってつけの一枚だ。完全なピアノ・ソロで構成された「Solitude」の優雅なメロディや、Billy StrayhornやEarl Hinesと繰り広げるピアノ同士のデュエットはどれも興味深い。だが本作を愛聴する人にしてみれば、こうした言葉は一種の建前にしか聞こえないかもしれない。どう取り繕おうと、このCDの最大の聴きどころはEllingtonとベーシストJimmy Blantonが残した、計9テイクの二重奏をおいて他にないからだ。
ソロイストのパイオニアであるBlantonの存在を無視して、ジャズ・ベースの歴史を語ることは許されないだろう。無名だった彼のプレイを一聴して惚れこんだ大物Ellingtonは、その翌日には自身のバンドへ引き入れていたというから驚きだが、「Pitter Panther Patter」の冒頭で響きわたる太く豊かなサウンドを聴けばそれも納得である。Ellingtonのピアノに寄り添いながら、全く対等な関係で自在にソロを繰り出す演奏は、1940年の御業とはとても思えない。
Blantonのもう一つの魅力はアルコ奏法の名手でもあったことだ。「Body And Soul」や「Sophisticated Lady」は一転してEllingtonが引き立て役にも思えるようなナンバーで、彼の官能的なベースの独壇場となっている。名前通りの「Mr. J.B. Blues」では、その巧みなスイング感覚が発揮されている。
結核で夭折したためにキャリアは3年にも満たないが、そのわずかの活動期間のうちにBlantonはベースを伴奏楽器という枠組みから完全に開放した。ビッグ・バンドにおける彼の仕事は『The Blanton-Webster Band』をはじめとする編集盤で簡単に聴くことができるが、彼のモダンな創造性の全貌を知るなら、本作のような作品も必須のアイテムである。