Hank Mobley – Roll Call (1961)
古いジャズのファンならば、〈Hank Mobleyの傑作といえば?〉という問いかけにはきっと頭を悩ませるはずだ。かつてのバンド・メンバーと邂逅した『Soul Station』には文句のつけようがないし、ボサノバからジャズ・ロックまで取り込んだ『Dippin'』もまた最高である。だが『Roll Call』が特別なアルバムになっているのは、『Soul Station』にも参加したWynton Kelly、Paul Chambers、Art Blakeyといった親密なメンバーに加え、Freddie Hubbardのトランペットとの間に素晴らしいコントラストが生まれているからだ。
Blakeyの特徴的なドラムが響き渡るイントロの「Roll Call」は、まさにJazz Messengersの空気が流れるハード・バップの名演奏だ。二管となったことでセッションにほどよい緊張感が生まれつつも、Mobleyのプレイには時おりささやかな遊び心が挟まる。理想的な雰囲気である。スリリングな「Take Your Pick」、ビッグ・バンドのような迫力に満ちた「The Breakdown」はいずれもコンパクトながらも、聴く者の印象にハッキリと残る魅力がある。
これらの曲はいずれもオリジナルである。Mobleyが作曲家としても優れていたことは明らかだが、本作唯一のスタンダード「The More I See You」の出来が特筆に値することも忘れてはいけない。河の流れのようにたゆたう彼のテナーとHubbardの粋なミュート、そして決して出しゃばることのないKellyのピアノが紡ぐ均整の取れたサウンドは、まさに名演と呼ぶべきだ。