Blind Faith – Blind Faith (1969)
ロックンロールの長い歴史の中で、Blind Faithほど刹那的なバンドはない。Cream解散後のEric ClaptonとGinger Bakerが、それぞれTrafficやFamilyといったバンドで成功していたSteve WinwoodとRick Grechらと合流した時、ロック・ファンだけでなくレコード会社の人間たちも、このグループに絶大な期待を寄せていた。Claptonのモチベーションが続かず数か月でバンドは解散したが、彼らの残したアルバムは、メンバーの持ち味が際限なく生かされた濃密な傑作となった。
サイケデリックから脱却した自信に満ちあふれるハード・ロック「Had To Cry Today」で幕を開ける。「Can't Find My Way Home」ではアコースティックも披露するなどスタイルは様々で、Buddy Hollyのオールディーズである「Well All Right」を緊張感のある演奏で蘇らせる試みもなされている。Claptonによるライティングは「Presence Of The Lord」のみだが、この曲はゴスペル・ロックの名演であり、Winwoodのソウルフルなボーカルとの完璧なブレンド、さらに転調からの息をのむ展開は見事としか言いようがない。これだけでも新生Claptonのサウンドを聴衆に知らしめるには十分だったはずだ。
B面のジャムが冗長だと言う者も少なからずいるが、それはとんでもない!Ginger Bakerのドラム・ソロ曲「Do What You Like」は、それぞれの見せ場や実験的なサウンド・コラージュも含まれた挑戦的な作りだが、非常に聴きやすいエクスペリメンタル・ロックである。Winwoodが最もドラマチックな絶唱を聴かせる「Sea Of Joy」を含め、アルバム『Blind Faith』は重要作の宝庫であり、解散後も本作のレパートリーが各メンバーのライブで披露されていることからもそれは明らかだ。