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Big Brother & The Holding Company – Combination Of The Two (Live At The Monterey International Pop Festival) (2021)

 1967年夏のモンタレー・ポップ・フェスティバルに登場したBig Brother & The Holding Companyは、当時まだレコードも出していないサンフランシスコの無名グループだった。しかし、熱狂的にブルースを歌う不世出のシンガーJanis Joplinを世間に紹介したステージは大喝采を浴び、午後の部だけの予定だったのが、急遽夜の部での再演が決まるほどの反響を呼んだ。
 バンドは初期のレパートリーである「Down On Me」で登場し、ハードな「Combination Of The Two」で盛り上げる。Joplinの歌声は伸びやかで、Sam Andrewのギターは、とことん情熱に身を任せた思い切りのよさがある。BB&THCは、元々はフリー・ミュージックを志向するグループだったといわれるが、その面影は前衛的でクレイジーな「Harry」の一幕に表れて(とはいえYoko OnoのようなJoplinのインパクトが一番だが)いる。ちなみにこの曲は「Road Block」とともに、アルバム『Cheap Thrills』のアウト・テイクになったことでファンには知られている。
 だが、音楽の歴史を塗り替えたのは「Ball And Chain」におけるJoplinの絶唱をおいて他にない。すがるような囁きと、のどが裂ける寸前まで張り上げたシャウトが飛び出す劇的なクライマックスに、会場が文字通り圧倒されているのが分かる。モンタレーの記録映画では夜の部のテイクが採用された(映像は午後と夜のフィルムをツギハギに編集したお粗末な出来だ)が、本作では午後の部も聴けるのが新鮮で、嬉しいところだ。もちろんどちらも甲乙つけがたいほど素晴らしい。
 BB&THCはこのわずか2つのステージをきっかけに大手コロムビアとの契約を勝ち取り、それを見た地元西海岸のメインストリーム・レーベルは、それまでお蔵入りにしていた彼女らのアルバムを慌ててプレスした。それがご存じ『Big Brother And The Holding Company』で、結果的にこれがバンドの記念すべきファーストLPとなった。