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The Black Crowes – Shake Your Money Maker (1990)

 ロックの枝分かれがますます手に負えないほど膨張する最中だった1990年に、ここまで古風なタイトルを冠するアルバムを発表するには、それ相応の勇気も必要だったはずだ。アトランタ出身の不敵なThe Black Crowesは、シングル「Jealous Again」や「Hard To Handle」、そしてこのファースト・アルバムのヒットにより、古典ロックのリバイバルの筆頭格として広く認知されるようになった。
 「Hard To Handle」は、もとはソウル・シンガーOtis Reddingの曲(彼が悲劇的な死を迎えた直後に発表された)で、The Black Crowesはこの歌を原曲のファンキーさはそのままに非常にハードなブルースに仕上げている。ボーカルのChris Robinsonは、ステージではまるで20年前のロック・スターのように振舞っているが、それは決して表層的なものではなく、根本の部分にはソウル・ミュージックの面影が確かにある。
 「Jealous Again」では、FacesやThe Rolling Stonesの持っていたルーズで危険なロックの魅力をより引き出そうとしている。ベテラン・ミュージシャンであるChuck Leavellがピアノで参加しているのはまさに確信犯的としか言いようがなく、メンバーのコーラスや絶妙なツイン・ギターといったすべての要素が互いを引き立てあっている。
 『Shake Your Money Maker』には往年のロックの輝きと、若いミュージシャンだけが持ちうる不遜さが奇跡的に同居している。1990年という時代に本作がヒットしたことに関しては、バンドが素晴らしかったのも当然だが、それを求めた素晴らしいリスナーも大勢いたということだ。