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Johnnie Ray – Johnnie Ray (1952)
コロムビアと契約したJohnnie Rayは、1952年に記念すべきデビュー・アルバムを発表した。これは、いわゆる音楽アルバムと呼ばれるものがSPレコードの束から10インチのLPというメディアに置き換わっていく時期、そしてジャケットの意匠がますますリスナーの視覚に訴えるものになっていく時期と重なっていた。そういう意味で言えば、Rayが悩ましい表情でマイクの前に立つアートワークは、この若き歌手の人間像を的確に捉えていて素晴らしいものである。
彼の感情的な歌唱スタイルはポップスの枠を超え、黒人音楽中心のレーベル〈オーケー〉からもいくつかのシングルが発表された。それはつまり、このあどけない顔の白人シンガーがR&Bの領域でも十分に活躍できるのを証明したということだ。
彼がThe Four Ladsの演奏で歌った傑作「Cry」は、本作には収録されていない。それどころか『Johnnie Ray』の中で彼の重要なシングル曲と呼べるのは、Fred Ahlertの「Walkin' My Baby Back Home」のカバーくらいかも知れない。しかし、冒頭の「Don't Blame Me」の縋りつくようなボーカル、「Give Me Time」の自省的な言葉のつむぎ方を聴けば分かるように、Rayの歌は最初から完成していたのだ。前述の「Walkin' My Baby Back Home」でさえ、完璧なスイングをこなしながらも、しっとりと悲しげな雰囲気を湛えているのが印象深い。そして「Out In The Cold Again」の圧倒的なエンディングは、RayがElvis Presleyの(特に後期の)スタイルに影響を与えていることの証だ。
Rayの人気は映画出演でさらに高まったが、なによりもステージ上のパフォーマンスで真骨頂を見せた。60年代に入るころには自身の人気は下降線をたどったが、ロックンロール前夜のアメリカン・ポップス・シーンにおける存在感は現在も失われていない。
ℹ️ 本作は表ジャケットにアーティスト名とアルバム名が表記されなかった世界初のLPレコードである。