Elias Hulk – Unchained (1970)
イングランドはボーンマス出身のハード・サイケ・グループElias Hulkによる唯一作は、リリース当時はほとんど話題にならなかったレコードだが、ファン層の厚いジャンルなだけあって多くのリイシューが重ねられている。アングラ・シーンの中では名作と讃えられることが多いだけに、オリジナル盤を手に入れるなら相当の額を覚悟せねばならない。
英国のビート・バンドThe Roulettesでギターを担当していたボーカリストPeter Thorpeを中心に結成され、Neil TatumとGranville Frazerによるツイン・ギターで重厚なサウンドを聴かせる。一発目の「We Can Fly」からBernard Jamesのドラム・ソロをフィーチャーして勢いの良さを見せ、「Nightmare」ではThorpeのハスキーなシャウトとTatumのブルース・ギターが絡む。エキゾチックなメロディが印象的な「Free」のほか、「Anthology Of Dreams」は妖しいギターのユニゾン、風変わりなインスト・ブルースの「Delhi Blues」はサイケに振り切った酩酊感あふれるアンサンブルが飛び出す。
突き抜けた個性を発揮することができなかったバンドはすぐに解散し、メンバーたちの多くは音楽業界を去ったようだが、Thorpeは1980年代にMagic Muscleのセカンド・アルバムに参加している。本作のプロデューサーでもあるレーベル・オーナーのMiki Dallonは、英国ポップの世界ではひとかどの男でDon Fardonの一連のアルバムを手掛けている。また、豪州の隠れた名バンドPython Lee JacksonをプロデュースしたことでRod Stewartとも関連のある人物だ。