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RP Boo – Legacy (2013)

 ほとんどシカゴのローカル・ムーブメントと言っていい音楽ジャンルの〈ジューク/フットワーク〉(Little Walterを思い出す人もいるに違いない)は、世界のダンス・シーンの目が届かない所で長いあいだ醸成されてきた。2013年に発表された『Legacy』は、90年代からDJとして活動してきたRP Booのあまりにも遅いデビュー・アルバムだ。
 フットワーク・ミュージックに免疫のないリスナーは、冒頭の「Steamidity」や「Invisibu Boogie!」で繰り出される予測不能なビートに、度肝を抜かれることだろう。ダンサーを翻弄するような曲の展開はこのジャンルの大きな特徴となっていて、「There U'Go Boi」や「Robotbutizm」で聴かれる奇妙だがエモーショナルなシンセのサウンドや、「No Return」における挑発的なサンプリングのセンスなどには、デトロイトやヒップホップのDNAがしっかりと流れているのがわかる。
 『Legacy』はスタイルこそ統一されているが、聴きどころや各曲の個性が強くて、1枚のアルバムであることを忘れてしまいそうになるかも知れない。ベースをそぎ落とした「Red Hot」の乾いたビート、「187 Homicide」のつづれ織りのような人声のサンプリング。特に「Sentimental」における素材とビートの不釣り合いな雰囲気などはまるでヴェイパーウェーブのようだし、「Havoc Devastation」はソウルフルなブラスとコーラスをフィーチャーしたおかげで、ダンス抜きで聴き惚れそうな一曲として完成されている。