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Jack Johnson – Brushfire Fairytales (2001)

 当初G. Loveのアルバムに客演して話題となった元プロ・サーファーのギタリストJack Johnsonは、その後Ben Harperによって本格的に見出された。2001年の処女作『Brushfire Fairytales』は、素朴で卓越したギターとおだやかなグルーヴに貫かれており、誰もが認めるアコースティック・ロックの金字塔となった。そして、このアルバムを聴いた世界中のリスナーが、肩ひじを張らずに生きることの素晴らしさについて気づかされたのだった。
 Johnsonはせせこましい世間を見つめながらSergei Eisensteinの映画論を交えてひとり哲学する。この「Inaudible Melodies」の歌詞には、古きよきものを愛するJohnsonの的確な観察眼と深い知性が表れている。Tommy Jordanのスティール・ドラムとHarperのスライドをフィーチャーした「Flake」は、90年代のファンクとミクスチャー感覚がみなぎった、とても魅力的で注目すべき一曲だ。
 こうした陽気なビートは本作の重要な要素で、続く「Bubble Toes」には口ずさみたくなるようなメロディとラテン風のメロディがある。一方、翳りのある「Drink The Water」では、穏やかな時のRed Hot Chili Peppersを思わせるサウンドの中で、自身がサーファー人生を絶たれるきっかけとなった事故について言及している。
 『Brushfire Fairytales』は常に等身大で、飾らない情熱に満ちていながらも時に赤裸々な一枚だ。本作は翌年にプラチナ・アルバムに認定されたが、Johnsonはだれよりもマイペースなやり方でこの偉業を成し遂げたのだった。