Ganelin Trio – Con Anima (1977)
ソ連の伝説的アンサンブルGanelin Trioの激動に満ちたキャリアの中でも、本格的なスタジオでの録音活動が開始された1975年は大きな転機と言える一年だった。Ganelin Trioにとって『Con Anima』は、当時ジャズへの風当たりが強かったソ連国内で流通が認められた初めてのアルバムだが、録音から発表に至るまでには丸一年以上のブランクを要した。
レコード向けに構成された「Con Anima」はトラック上では一つながりになっているが、彼らのさまざまなアイデアと試行が、各メンバーの卓越した音楽技術によって緻密に積み重ねられた壮大な組曲である。冒頭(1:00ごろ)から始まるセッションでは、ベースレスの穴をVyacheslav Ganelinのキーボードが埋め、60年代前半のNYを思わせる緊迫したフリー・ジャズが繰り広げられる。10:30ごろから始まるVladimir ChekasinのシャリュモーとVladimir Tarasovのパーカッションによる抑制の効いたやり取りは、非言語による対話のようだ。
その後タイトなリズムに切り替わる(15:30ごろ)と、スインギーなクラリネットと攻撃的なピアノが見事な対比を見せる。後半の民族音楽のようなテイスト(28:00ごろ)からラスト5分半に及ぶ壮絶なエンディングなど、聴きどころは尽きない。
真に自由なGanelin Trioの音楽は保守的なソ連当局の怒りを買い、〈民衆に必要とされない音楽〉との判断を下された。しかし国内外からの地道な支援により、76年には初めての国外での演奏活動が、81年にはアルバム『Concerto Grosso』がそれぞれ解禁され、彼らの存在は少しずつ西側の国へと広まっていった。