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Soft Machine – Third (1970)

 Soft Machineの『Third』は、The Keith Tippett GroupのメンバーだったElton Deanが加入し、路線を大作主義へ完全移行させた彼らの再出発点と言える。音楽性の食い違いでメンバーの溝は一層深まったが、カンタベリー派ロックの最重要作の一つであることには変わりない。
 「Facelift」はライブ録音された複数のマテリアルによって構成された曲で、オルガンのMike RatledgeとDeanのサクセロを中心とした前衛的なソロの応酬が繰り広げられる。モノラルとステレオの音源が交互に展開するが、組曲としての絶妙な構築感は失われていない。「Slightly All The Time」はゆったりとした曲だが変拍子のオンパレードだ。Robert WyattとHugh Hopperのテクニックはすさまじく、特に9/4の高速なリズムで疾走していく最終部は圧巻である。
 もともとサイケデリック・バンドとしてデビューしたSoft Machineとしては、「The Moon In June」のサウンドは初期の音楽性の残滓とも言うべきもので、Wyattの厭世味にあふれたボーカルには絶妙な儚さがある。ラストでは再びアヴァンギャルドに立ち返っており、「Out-Bloody-Rageous」の冒頭部分ではTerry Rileyの顔を思い起こす人も多いはずだ。
 結果的に本作はWyattのボーカルがフィーチャーされた最後のアルバムとなり、次作の『Fourth』はさらにフリー・ジャズ志向を強めたサウンドになった。バンドから存在が浮きつつあったWyattは、彼と同じくCaravanでの活動に限界を感じていたDave Sinclairと意気投合し、同アルバムを最後にバンドを脱退した。