Yes – Yes (1969)
Creamの公演の前座を務めるなどして徐々に知名度を獲得していたYesは、UKシーンの中でいち早くアメリカの名門アトランティック・レーベルのドアをノックしたグループだ。本作の英国オリジナル盤の印象的なジャケットを見ると、あたかもアトランティックのロゴが〈YES〉と答えているかのようである。そうして国内外で高まる期待の中、1969年に彼らはこの傑作デビュー・アルバムを発表した。
Peter Banks在籍期のYesは、後に見られるような目まぐるしい転調や9分越えの大作ではなく、サイケデリック・ポップにハード・ロックのエッセンスを加えたサウンドが特徴だが、彼らのゆるぎない個性は本作の時点ですでに確立されていた。「Beyond And Before」のイントロにおける硬質なサウンドや「Every Little Thing」のブルージーなソロなどを聴けばわかる通り、BanksのギターはBill Brufordの緊張感に満ちたドラムに引き立てられている。特に後者は数あるThe Beatlesソングのカバーの中でも特にドラマチックな出来で、必聴の一曲だ。
Chris Squireの重厚なベースと、Jon Andersonの美しいボーカルは驚くほどに完成されている。激しい曲はもちろん、穏やかなハーモニーが印象的な「Sweetness」のようなナンバーでもSquireは一貫して存在感を放って見せている。Tony Kayeのキーボードは後のアルバムでの活躍に比べればおとなしめに聴こえるかもしれないが、特に「Looking Around」や「Beyond And Before」において、本作のサイケ作品としてのムード作りに大いに貢献しているのが分かる。
『Yes』はプログレ・バンドとして大成する以前の作品だが、それぞれのメンバーの持ち味がしっかりと活かされている一枚でもある。いずれにしても、多くのリスナーが本作を聴いてただならぬ予感を得たであろうことは間違いない。