Booker Ervin – Lament For Booker Ervin (1975)
Booker Ervinの死から5年を経て発表された本作は、エンヤ・レーベルのオーナーであるHorst Weberが、Ervinの遺族ら(音源の権利のほか、ジャケットにコメントも寄せている)の厚い協力を得て世にだした追悼盤でもある。聴きどころは、今や語り草となった賛否両論のライブ音源だ。
1965年のベルリンで行われたジャズ・フェスティバルのステージは、半狂乱の様相だった。カルテットを率いて登場したErvinは、「Blues For You」という曲名をアナウンスしたのち、フェスの運営が事前に提示した時間を無視して超長尺のサックス・ソロを吹いたのだ。イントロの力強いブロウや後半の印象的なフレーズでも分かる通り、この曲は前年のアルバム『The Freedom Book』に入っている「Grants Stand」をもとにしたブルースで、レコードには27分半の演奏がA面とB面をまたいで収録された。メンバーはErvinが信頼を置くドラマーAlan DawsonにピアニストKenny Drew、そしてフェスの直前に急死したベーシストGeorge Tuckerの代わりに当時19歳のNiels-Henning Ørsted Pedersenが選ばれたが、いずれも本作ではソロを執っていない。しいて言えばDawsonがラストの部分でErvinに〈そろそろ締めよう〉といった雰囲気のフィル・インを叩いているところだろうか。
オーディエンスの反応は実に生々しい。B面以降になると、Ervinのブロウに呼応するように観客の喝采が贈られるが、同時に〈演奏をやめろ!〉という何者かのヤジもクリアに聴こえてくる。
まるで熱病のような喧騒の後にやって来るのは、完全ピアノ・ソロでErvinを追想する「Lament For Booker」だ。これを弾くのは盟友Horace Parlanだが、荘厳に響くピアノのメロディにはタイトル通りの翳りと悲しみがただよっている。