Funkadelic – Maggot Brain (1971)
世界が崩壊する時の音を聴きたければThe Rolling Stonesの『Let It Bleed』をかければいい。1970年代初頭の鬱屈とした社会の空気を感じたいなら、Sly & The Family Stoneを聴くのも手だろう。終末論や暗い世相から生まれた音楽は数あれど、Funkadelicの『Maggot Brain』はそうした世界の醜さを宇宙の視点からとらえた、おそらく最初のレコードだ。
本作で最も注目を集めるタイトル・トラックでは、ギタリストEddie Hazelが長尺なスロー・ブルースとともに自らの感情を爆発させている。冒頭で繰り広げられるGeorge Clintonによる独白調のセリフは、Hazelのギターにも負けないくらい心に迫ってくる。人類の所業を〈宇宙のウジ虫〉と断罪するかのような言葉の数々は、Clinton自身が持つ宇宙的思想と、かつてプロセス・チャーチと呼ばれた新興宗教の影響が掛け合わされたものだ。ライナー・ノーツには恐怖にまつわる教義がとうとうと引用されているが、「You And Your Folks, Me And My Folks」の歌詞はどうやらここからヒントを得ているようである。
とはいえ、重要なのは本作のほとんどがヘヴィでかっこいいファンク・ロックのサウンドで構成されていることだ。「Can You Get To That」はFunkadelicらしい自由で濃密なコーラスで出来ていて、目が回るようなSEで彩られた「Wars Of Armageddon」や「You And Your Folks, Me And My Folks」では、熱狂的なアンサンブルが戦争や人種差別を攻撃していく。一方、思想をかなぐり捨てた「Super Stupid」はHazelがリードするナンバーで、彼はここでJimi Hendrixのようなハードな演奏を展開している。