Tampa Red – Complete Recorded Works, Volume 11 (1993)
1930年代初頭、黄金のコンビだったGeorgia Tomとのメンバーシップを解消した後のTampa Redは、まるで抜け殻のようになってしまった。あれだけ旺盛だった演奏の意欲は失われ、2年近く録音の仕事から遠のいた。ブルバード・レーベルに移籍した後は、新たなピアニストで後に生涯の友となるBlind John Davisと組み、ふたたび膨大な数のレコーディングをこなすようになっていく。そして、エレクトリック・ギターをブルースに導入するようになった1939年頃はTampa Redの第二の全盛期といえるだろう。
39年の11月から約1年間の仕事を収めた本作には、後のブルース・ロックに多大な影響を与えた彼の中でも特に重要、かつ印象深い作品が入っている。前半はベースとDavisのピアノをフィーチャーしたパワフルなスタイルで、「Sweet Mellow Woman Blues」などはミドル・テンポながらTampa Redの歌声と重たいピアノのタッチががっちりと噛み合っている。だが白眉はいずれも後のR&Bスタンダードとなった「Don't You Lie To Me」と「Anna Lou Blues」のカップリングだろう。Tampa Redがジャグ・バンドから持ち込んだカズーの荒っぽいブロウと、初期のエレキ・ギターの音色が聴きどころである。誰もが知る「It Hurts Me Too」のメロディは、戦前からElmore Jamesを通って2010年代のThe Rolling Stonesまでを一直線につないでいる。これこそブルース史に燦然と輝く名曲だ。
後半は独演ながらバラエティに富んでいる。ジャジーで陽気な「The Jitter Jump」から、静かな悲しみを湛えたディープ・ブルース「This Ain't No Place For Me」など、彼の技術とセンスが特に冴えわたっている。