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Soul Dog – Movin' On (1976)

 ナッシュヴィルのスタジオで、Soul DogことCarl Marshallによって録音されたこの素晴らしいリリースは、真の意味で1976年におけるブラック・ミュージックの核を示す一枚である。このレコードには、DJをとりこにする重厚で腰の入ったディスコ・ファンク、シカゴ系の緩やかなグルーヴに加えて、ヒップホップ黎明期らしいラップ・ナンバーが収録されている。
 ハイウェイの爽快感に満ちた「Soul Truckin'」や、アルバムのタイトル・トラックの面も持つ「Soul Dog」でMarshallは、極太のベース・ラインに色気のある語りを乗せている。ハープを導入した「Break Break」はJimmy Reedを強く意識したブルースで、続く「Ain't No Greens In Harlem」のタイトで陽気なディスコ・サウンドと明快な対比を生み出してみせる。
 だが『Movin On』で色あせない輝きをいちばん放っているのは、間違いなくメロウ・チューンである。タメの効いたテーマが印象的な「Can't Stop Loving You」は、一度聴いただけで永遠に忘れられなくなるような名曲だ。「Why Can't I Love Somebody」ではこの上なく美しいストリングとMarshallの歌声が涙を誘う。
 本作以降はシングル中心の発表が続いたが、20世紀に入ってMarshallの創作意欲は格段に高まった。自身が運営に携わるCDSレーベルからはサザン・ブルースのアルバムも出している。