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Akkord – Akkord (2013)

 2012年に登場したAkkordは、当初こそ完全な匿名を貫いて活動していたが、すぐにマンチェスター出身のアーティストSynkroとIndigoのコンビであることが分かった。80年代の後半に生まれたふたりは、いずれも90年代のUKテクノ・シーンの隆盛には間に合わなかった。そして、そのことがAkkordにおけるジャングルの徹底した脱構築にも繋がっているのかもしれない。
 前作であるEP『Navigate』と比べると、本作のサウンドはさらに冷たく研ぎ澄まされたものになっている。インダストリアル風の質感を持った「Torr Vale」に始まり、やがて低空飛行の「3dOS」や「Folded Edge」における装飾をそぎ落としたスタイルが表出していく。「Hex_Ad」では耳障りなグリッチ、最後の「Undertow」は陰鬱なアンビエント・ドローンで、冒頭の「Torr Vale」への自然なリピートを導入する。だが、なんといってもアルバムの白眉は優れたダブステップの「Navigate」だ。このトラックが本作で最もとっつきやすく、同時に輝いてもいる。
 多くのジャンルを股にかけながらも、まったく純粋なアプローチで一枚のLPを構築するのは並大抵の業ではないだろう。テクノを俯瞰するAkkordの眼は音楽家の眼であると同時に、歴史家の眼でもある。