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Japanese Breakfast – Psychopomp (2016)

 エモ・バンドLittle Big Leagueのフロントマンとしてすでに知られていた女性ボーカリストのMichelle Zaunerは、自らの母親ががんを患ったことをきっかけにソロ・プロジェクトであるJapanese Breakfastの活動を開始する。2014年から2年かけて録音された30分足らずの作品だが、評論家やリスナーからは好意を持って受け入れられた。
 彼女のそういったパーソナルな事情も相まってか、歌われる内容自体は暗いものも多いが、アルバム全体を包むのは陰鬱な境遇を振り払うかのような明るいローファイポップのサウンドである。
 つかみどころのなさ、とはドリーム・ポップにおいてはある種の真理だ。輪郭のぼやけたZaunerのボーカルは、ガレージ、テクノ、サイケデリックといったジャンルの境界を溶かしてさまよいながら、変幻自在に心情を吐露していく。「Moon on the Bath」のミニマルなサウンドから流れ込むラスト曲「Triple 7」の歌唱はBjörkを思わせるが、これはLittle Big League時代の作品には見られなかった要素だ(とはいえ、『Tropical Jinx』で見られたエモらしいシャウトは今回鳴りを潜めている)。
 近しい人間の死はアーティストに少なからぬ影響を与えるが、『Psychopomp』はZaunerの音楽的技術にとどまらないシンガーとしての表現力を間違いなく押し広げたアルバムだ。母親の死という経験を経た彼女の歌には、聴くものが噛みしめるべき哲学にあふれている。