Zoot Sims – Down Home (1960)
ベツレヘム・レーベル、ワン・ホーン、Zoot Simsのリーダー作……どのカテゴリにおいても、このアルバムは間違いなく五本の指に入ると保証できる一枚である。だがベツレヘムにとっては残念なことに、この時期は西海岸のオフィスが閉鎖するなどして経営状態の悪化が進んでいた時期で、Simsがリーダーの作品はこれが最初で最後となった。
Simsはタイトル『Down Home』の通りジャズの原風景に立ち返っていて、レパートリーの多くは20世紀の初めに生まれた定番曲で占められている。特に冒頭の2曲「Jive At Five」と「Doggin' Around」でSimsは、Count Basieのオーケストラ、もとい当時のサックス奏者で自身のプレイに多大な影響を与えたLester Youngへリスペクトを捧げている。「Avalon」の流れるようなフレージングや、てらいの全くない「There'll Be Some Changes Made」も聴きどころだが、オリジナルのブルース「I've Heard That Blues Before」にあふれるどこかノスタルジックな雰囲気もまったく素晴らしい。
力を抜いて楽しめるだけでなく、心をつかまれるアルバムだ。職人的にサポートに徹してみせるDave McKennaのピアノ、そして時にアグレッシブに存在感を見せつけるDannie Richmondのドラム・ソロの対比も魅力がある。