Little Richard – Here's Little Richard (1957)
1955年、スペシャルティ・レーベルの敏腕プロデューサーRobert "Bumps" Blackwellによって見出されたLittle Richardは、当初Fats Dominoの音楽を意識して、ニューオリンズのセッションマンたちと組んだ。ところが、結果出来上がったのはピアノよりもRichardのけたたましいシャウトを前面に押し出した、今までにない新鮮な音楽だった。この時期に生まれた「Rip It Up」や「Long Tall Sally」といった画期的なシングルはアメリカのR&Bチャートの上位を独占し、ロックンロールの開放的なイメージを定義した。
50年代はじめのRCA時代に彼が歌っていた、パワフルだが典型的なジャンプ・ブルースとの違いは歴然としている。たとえば「Tutti Frutti」の冒頭から放たれる〈A-wop-bop-a-loo-mop-a-lop-bam-boom!〉というスキャットの、意味を持たないゆえに強烈なインパクト。さらに「Jenny, Jenny」における、イントロの音量とあまりにも不釣り合いな爆弾のごときボーカルにも、それはよく表れている。「She's Got It」のハイテンポな歌などはまるでラップのようだ。
とはいえ演奏の素晴らしさにも触れなければならない。スローなブルース「Can't Believe You Wanna Leave」を聴いても伝わってくるように、南部仕込みのファンキーなサウンドがRichardのテンションを極限まで高めているのが本作のキモなのだ。R&Bチャートの1位を取った「Long Tall Sally」ではLee Allenのサックスが、「Slippin' And Slidin'」ではRichardの軽快なピアノが冴えわたっている。
すべてがロック・クラシックと呼べる『Here's Little Richard』は、同時期に生まれたThe CricketsやElvis Presleyのファーストと並ぶ歴史的名盤である。Richardが本作で成し遂げたことは、あらゆるロック・バンドに例外なく受け継がれている。