The Lemon Pipers – Green Tambourine (1968)
オハイオ州で結成されたThe Lemon Pipersは、今でこそ本作のタイトル・トラックの大ヒットによってバブルガムのはしりと捉えられているが、彼らが元々アンダーグラウンド・ロック界たたきあげのバンドだったことはあまり話題に挙がらない。ラドロー・ガレージ(Allmansのライブ盤は聴いたことがあるだろう)をはじめとした地元の会場でギグを重ねた彼らは、ブッダ・レーベルと契約を結び、サイケ・ビート「Turn Around And Take A Look」でデビューした。このシングルが不発に終わったことで、ブッダはPaul LekaとShelley Pinzのコンビをライターとしてあてがうことにした。そして、きらびやかなストリングに彩られた名曲「Green Tambourine」が全米1位のヒットとなった時、The Lemon Pipersの方向性が定まった。
Leka & Pinzはこの曲のほかにも「Rice Is Nice」や「The Shoemaker Of Leatherware Square」といった、絵本の世界から飛び出したような美しい曲を書いている。コーラスを意識したフォーク・ロック「Ask Me If I Care」、グルーヴィーな「Stragglin' Behind」、そして「Fifty Year Void」における重厚なブルースのアンサンブルを聴けば、冒頭の話が嘘ではないことはわかるだろう。だが最大の聴きどころといえば、ラストを飾る「Through With You」という大曲で、ここでは「Eight Miles High」をベースにしたようなハードなインプロヴィゼーションが9分にわたって繰り広げられている。
『Green Tambourine』には、成功と理想のはざまで揺れる彼らのジレンマが、デビュー作にしてすでに投影されている。結局、バンドはLeka & Pinzの路線を拒絶し、2枚のアルバムを残して1969年に解散してしまう。