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Food Brain – 晩餐 (Social Gathering) (1970)

 ジャンルでいえば歌謡曲と並行して発展してきた日本のロックの中で、いち早くボーカルをそぎ落としたプログレッシブ・ロックを展開していたのがFood Brainである。The Golden Cups、Jacks、Powerhouse、Apryl Foolといった錚々たるバンドのメンバーが集結して生まれた本作は、フリージャズの影響も多分に吸収した正真正銘の名盤だ。
 折しもジャムを基調とした大曲主義がロックの世界に根付き始めていた時期である。本作もその例に漏れず、冒頭の「That Will Do」をはじめとしたギターとオルガンのプログレ的掛け合いが聴けるのだが、その裏で繰り広げられる加部正義と角田ヒロ両名による、リズム隊同士のヘビー級の殴り合いのようなグルーヴ合戦も同じく衝撃的だ。
 全編フリー・インプロヴァイゼーションで構成された「The Hole In A Sausage」の中でEric Dolphyのようなクラリネットを演奏するのは、タージ・マハル旅行団のメンバー木村道弘である。一方「Liver Juice Vending Machine」は陳信輝のギターが炸裂するハードロックだ。「Dedicated To Bach」というタイトルの小品や、時折挟まれるショパンのフレーズなど、クラシック音楽の要素が意識されているのも非常に興味深い。
 角田は翌年ハード・プログレ・バンドStrawberry Pathを成毛滋と結成している。彼らのアルバムに収録された「Mary Jane On My Mind」は、後にバラードの名曲「メリー・ジェーン」へと変貌する。