Pete Brown Sextette – Peter The Great (1955)
初期のジャズとR&Bを彩ったアメリカのサックス奏者Pete Brownは、その全盛期が1930~40年代ごろであるために、LPレコード時代の作品は比較的貴重な存在である。54年録音の本作は、当時まだまだ若手だったJoe Wilderをはじめとした気鋭のプレイヤーがBrownを囲み、自作のブルース曲と往年のナンバーを軽快に繰り出していく名品である。
「There Will Never Be Another You」は六重奏らしい厚みを感じさせるアンサンブルに始まり、実にテンポよくソロのバトンが渡されていく。ムードたっぷりに吹き上げられる「Moonlight In Vermont」のメロディも良い。かつてFrank Newtonのオーケストラで演奏されていた「The World Is Waiting For The Sunrise」は当時のファンにとっては懐かしの曲だが、本作はRudy CollinsとGene Rameyの流れるようなリズムにのせてモダンなビバップ風にプレイされている。
丁寧にアレンジされた「Tea For Two」から続くオリジナルの「Delta Blues」は、Wilderによるミュートの粋とBrownのソウルが絡む、極上の逸品ともいえる流れ。戦後のBrownのキャリアは、糖尿病による健康状態の悪化と闘いながらのものだったといわれているが、本作の演奏にはそういった陰りのようなものはほとんど感じられない。初期ベツレヘムのカタログをスインギーに彩る、まさに偉大なる一枚である。