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Ginger Baker's Air Force (1970)

 長続きこそしなかったがプレスには最高のスーパー・グループと評されてきたCreamやBlind Faithが解散した後、ドラマーのGinger Bakerは少人数のブルース・バンドではできない音楽を追求するために、10人ものメンバーを擁したAir Forceを結成した。古くからの付き合いであるGraham Bondも参加した第一作目は、奇しくもかつてCream解散ツアーのステージにもなったロイヤル・アルバート・ホールでライブ録音された。
 もともとPhil Seamenの影響を受けていたBakerの、ジャズ・ドラマーとしての素養と、大幅にアフリカナイズされた重く土着的なグルーヴがさく裂している。多くが10分を超える大作ではあるのだが、冒頭の「Da Da Man」や「Early In The Morning」をはじめとしていずれの曲もテーマは明快で、一度聴けば口ずさめそうなほどにキャッチー(前者はBlack Sabbathの「Wicked World」を思い出す)でもある。
 「Aiko Biaye」は特にアフロ音楽色の濃いイントロに始まるが、聴きどころはHarold McNairやChris WoodのサックスとDenny Laineのギターが織りなす激しい音の対決だろう。ベースのRick Grechは随所で妖艶なフィドルも披露している。「Toad」と「Do What You Like」は、ファンにはすっかりおなじみとなっていたBakerによる自由時間だ。後者はBlind Faith時代と同様に、Steve Winwoodのオルガン・ボーカルがフィーチャーされているが、Air Forceならではのホーン・アンサンブルががっちりと脇を増強している。
 以降、Bakerはナイジェリアに渡ってFela KutiやTony Allenらと共演するなど、アフロ・ビートへの傾倒をますます深めていった。本作は60年代までの彼の音楽の総決算であると同時に、来るべきワールド・ミュージック時代の導入にもなっている。