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Rick Derringer – Live In Cleveland (1976)

 The McCoysやWinter兄弟との活動を経て、Rick Derringerは自らのバンド〈Derringer〉名義で最初のライブ・アルバムである『Live In Cleveland』を発表した。しかしレコードはその充実した内容にもかかわらず、当時ラジオ放送用に流通しただけで一般に出回ることもなく、永らく公式にCD化もされてこなかった。
 Derringerの傍らには彼と見事なツイン・ギターを奏でるDanny Johnsonがおり、さらに後期Black SabbathのメンバーとなるドラマーVinny Appice(Carmine Appiceの実の弟でもある)、元Dustのベーシストで後にローリング・ストーン誌に表彰されるKenny Aaronsonという信頼できるメンバーもいた。『Live In Cleveland』での演奏には比肩するもののないほどの熱量が全編にあふれており、プレイヤーと観客の間にも理想的な一体感が生まれている。
 「Beyond The Universe」でのAppiceは目が回るようなドラムさばきを披露している。この曲の後半にDerringerとJohnsonが生むアンサンブルはドラマティックそのもので、そこから間髪を入れず自身の最大のヒット・ソングである「Rock And Roll, Hoochie Koo」になだれ込む。この曲でライブは最高潮を迎えるが、13分弱という長尺の中でAaronsonのグルーヴのうねりは常にバンドをあおり続け、高速かつ自由なインプロヴィゼーションの中ではThe Kinksのおなじみのリフが挿入される。本作ではこうしたカバー曲の存在もかなり印象的で、ラストはDavid Bowieの「Rebel Rebel」をとことんハードに熱唱する。
 ソフト・ロックからブルース、ファンクまで様々なジャンルを渡り歩いたDerringerだが、ここでは一本気なハード・ロッカーとして貫徹している。輝きに満ちたこのクリーブランドの夜は永遠のものだ。