Blodwyn Pig – Ahead Rings Out (1969)
ほとんど歴史から抹消されているMGM時代の7インチを除けば、Jethro Tullはファースト・シングルである「A Song For Jeffrey」からヒットを飛ばした気鋭のバンドだった。Mick Abrahamsのハード・ブルース・ギターと、トラッドやクラシック音楽を志向するIan Andersonのサウンドが見事に折衷した初期のTullの作風は今聴いても見事であるものの、Abrahamsは早々にバンドを脱退し、Andy PyleやRon BergらとともにBlodwyn Pigを結成した。
Andersonによるフルートの代わりにJack Lancasterのドライブ感あふれるサックスが加わったことで、『Ahead Rings Out』はTullとは全く異なる60年代ジャズ・ロックの傑作に仕上がっている。最初の「It's Only Love」こそ昔懐かしい雰囲気をまとったスイング風の分厚い音を意識しているが、「The Modern Alchemist」はギターとサックスの密接なインタープレイによって、現代的なプログレらしい手に汗握る緊張感がみなぎっている。実際この曲は当時のライブでは10分に及ぶアレンジで演奏されていた。
「Leave It With Me」のようにフルートをフィーチャーしている歌もある。アコースティック・ブルースの「Change Song」から、うわごとのようなボーカルのサイケ・ナンバー「Ain't Ya Coming Home, Babe?」に展開する構成には、ジャンルの限界を感じさせない彼らのスマートささえ感じられる。
バンドは散発的な活動をするにとどまったが、再結成のたびに発表されるアルバムは参加メンバーが豪華なことも多く、内容的にもどれも聴き逃しがたいものばかりである。