The Kinetic – Live Your Life (1967)
イギリスの名ギタリストBob Westonのキャリアで最も有名なのは、Danny Kirwanに替わって加入した中期Fleetwood Macにおける活躍と、Jenny Boydとのスキャンダラスな恋愛劇である。とはいえ、ハード・ブルースの雄Ashkanや、朗らかなカントリーを取り入れたAshman Reynoldsといったグループも、それぞれ寡作ながらも忘れがたいものがあった。
だが今回は彼の在籍した最初期のバンドThe Kineticにフォーカスしてみよう。The KineticのLPはイギリス本国ではなくフランスのみのリリースではあったが、力強いR&Bのビートにきらびやかなサイケ・ポップとジャズの要素を巧みにブレンドしており、1967年当時のどのロック・シーンのバンドと比較しても、決して遜色など無い。非常にハイレベルな内容である。
冒頭の「Michael Humby」からしてインパクトがある。Michael Humbyによるオルガンに、フルートやヴァイブといったアクセントの加わった、プロト・プログレのような仕上がりだ。サイケ・ナンバーにも多彩な技巧が凝らされている。「Suddenly Tomorrow」ではWestonの強烈なギターがうなりを上げ、「Time Of Season」は美麗なバロック・ポップに仕上がっており、一方「Child's Song」は初期のPink Floydにも似た、夢の中をさまようような不思議な感覚がある。
「The Train」はUKのブルース・シーンの息遣いを感じるナンバーで、名前の通りのスロー・ジャム「Jam Around」では、Humbyのオルガンがジャズのエッセンスをばらまきながらけん引する。いずれの曲でもWestonによる暑苦しいまでのギターが印象深いが、同時にシカゴ風のラフなハープもフィーチャーされている。