見出し画像

38 Special – Wild-Eyed Southern Boys (1980)

 1977年にファースト・アルバムを出すころには、38 Specialはすでに3年のキャリアを持っていた。サザン・ロックの歴史を俯瞰してみても、彼らは遅れてきた男たちだった。しかし、80年代の音楽シーンにおいて38 Specialほど南部らしい豪快さとロックンロールの内包するポップ・センスをうまく結びつけたバンドはいない。
 3作目のアルバム『Rockin' Into The Night』で挑んだ〈70年代からの脱却〉というテーマは、シングル「Hold On Loosely」のヒット(ビルボード27位)としてしっかりと形になった。Don BarnesとJeff Carlisiの重厚なギター・アンサンブルが垢ぬけたサウンドをけん引するこの曲には、後に「Eye Of The Tiger」をヒットさせるSurvivorのメンバー、Jim Peterikが共作で貢献していた。もう一つの名曲「Fantasy Girl」でのDonnie Van Zantのシャウトは、まるで少年のように純粋かつストレートである。
 変わらないものもある。タイトル曲の「Wild-Eyed Southern Boys」には骨太なブギーのリズムと情熱的なブルース・ギターのソロがなおも息づいている。Jack GrondinとSteve Brookinsのツイン・ドラムから生まれる「Throw Out The Line」のタイトなリズム、「Honky Tonk Dancer」の中で描かれる粗野な男女の駆け引きもまたしかりだ。
 38 Specialのアルバムのイントロダクションには、とかくDuane AllmanやRonnie Van Zantの死といった暗いエピソードがついてまわる。だが、『Wild-Eyed Southern Boys』は伝統と野心を抱いて作られた、底抜けに明るく、そして偉大なアルバムだ。