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T-Bone Walker – Every Day I Have The Blues (1969)

 ベトナム戦争の憂鬱を歌ったブルースマンは社会派のJ.B. LenoirやLightnin' Hopkinsだけではない。40年代から50年代にかけて数えきれないほどの名演を記録したAaron "T-Bone" Walkerは、60年代にも当時の音楽や社会の潮流を捉えた見事なアルバムを発表している。
 「Shake It Baby」ではLouie Sheltonの歪みをきかせたギターと、のちにThe L.A. Expressで名を上げるTom Scottの外連味がたっぷりなサックス・ソロが加わっている。Walkerのギターと深みのあるボーカルは、そうした若手プレイヤーたちの演奏の中で確かな存在感を放っており、いずれの曲においても主役の座を奪われることがない。
 プロデューサーのBob Thieleは大御所のブルースマンに対し、こうした現代的(John Lee Hookerのアルバム『Simply The Truth』と同様のアプローチだ)なエッセンスを与えたことで、ロック世代の琴線に的確に触れるファンキー・ブルースを作り上げてみせた。Thieleの筆による「Vietnam」をはじめとした新しいナンバー、そして「Every Day I Have The Blues」のような不動のスタンダードなど名曲揃いだ。「T-Bone Blues Special」は9分弱の長尺に生まれ変わっているうえに、Sheltonが書いた「For B.B. King」というWalkerのソロをとことんフィーチャーした興味深いギター・ジャムもある。
 Walkerのこのファンキー路線はポリドール・レーベルのアルバム『Good Feelin'』がグラミー賞を獲得したことで評価され、古きブルースの伝統と思われていた彼のギター・スタイルが70年代でも通用するものであることを証明した。