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Canned Heat – Boogie With Canned Heat (1968)
ブルース・リバイバルの精神に満ちたアルバム『Canned Heat』でデビューしたCanned Heatは、2枚目である本作において古典の挑戦的なアレンジだけでなく、刺激の強いオリジナル・ナンバーを盛り込んだことでアメリカン・ロック・シーンの度肝を抜いた。
「On The Road Again」はFloyd Jonesのヴァージョンを元にしているが、ギタリストのAlan Wilsonがいくつかの詞を新たに追加している。さらに印象的なのはサイケデリックなサウンドのアレンジで、イントロでは中東の楽器であるタンブールを効果的に使用している徹底ぶり。なにより伝統的なブギーのリズムとドローン・ミュージック的な重量感を折衷したセンスも素晴らしい。ここでは荒々しい歌が魅力のBob Hiteではなく、Wilson自身がボーカルを執っているのも特徴である。彼は「An Owl Song」(Owlは彼のあだ名)でも歌っているが、なぜかWilsonの細い歌声には昔ながらの雰囲気のホーンがことのほかマッチする。続く「Marie Laveau」は「An Owl Song」と並んでバンドの最も古いオリジナル曲の一つでもある。
最も人々を驚かせたナンバーはおそらく「Amphetamine Annie」で、これはスピードと呼ばれた薬物に溺れる女の末路を克明に描いた社会派のナンバーだった。歌詞もセンセーショナルだが、いちばんのポイントはHenry Vestineによる鋭いギターで、60年代ひいてはブルース・ロックの歴史の中でも傑出したソロを聴かせる必聴の一曲だ。彼らの新たな作風を示したこのアンチ・ドラッグ・ソングはラジオでも頻繁に放送された。
彼ららしい古典主義も健在で「Whiskey Headed Woman No. 2」はHiteが冒頭で宣言するとおり、Tommy McClennanのブルースを現代的に蘇らせた渾身の一曲だ。John Lee Hooker風の「Fried Hockey Boogie」は10分を超える大曲となり、こうした長尺のブギーでアルバムを締めくくるというコンセプトは次作の『Living The Blues』にも受け継がれた。ラストで聴こえるHiteの〈Don't forget to boogie!〉というセリフはCanned Heatの思想をよく表している。