The Byrds – Sweetheart Of The Rodeo (1968)
68年のThe Byrdsは、David Crosbyの脱退や5枚目のアルバム『The Notorious Byrd Brothers』のセールス的な苦戦といった内憂外患に直面していた。起死回生を図ったRoger McGuinnは、南部で出会った青年Gram Parsonsに次回作のかじ取りを任せることにした。彼は以前The International Submarine BandというグループでLee Hazlewoodのレーベルからデビューしていて、その経験からThe Byrdsの次なる路線はカントリーしかない、とMcGuinnを説得したのだ。
Parsonsの熱はメンバーに伝播した。本作の録音にはスティール・ギターのLloyd Greenを呼び、ドラムではParsonsの盟友Jon Cornealが招かれている。曲のレパートリーにもこだわり、The Louvin Brothersの「The Christian Life」や、クリスチャンの伝統歌である「I Am A Pilgrim」が選ばれたが、これらは当時のヒッピーたちが見向きもしないような古臭い価値観を歌ったものだった。
Parsonsと趣きを同じくしたのがChris Hillmanで、もともとマンドリンの名手であった彼は「Pretty Boy Floyd」などで面目躍如を見せる。「One Hundred Years From Now」はParsonsによる唯一のオリジナルで、ここではメンバーのコーラスと軽やかなギターのアンサンブルが見事なマジックを生んでいる。また、「You Don't Miss Your Water」ではソウル・ヒットをカントリーにアレンジする興味深い試みをしている。しかし、こうしたParsonsのワンマンともいえる制作体制にストップをかけたのがHazlewoodだった。Hazlewoodは自身のレーベルとの契約を盾に、本作のポスト・プロダクション作業を中断させたのだ。そのため、いくつかのトラックではParsonsのボーカルが削除され、McGuinnらのものに差し替えられた。
The Byrdsの新境地だけでなく、カントリー・ロックの成立に大いに貢献したParsonsは、ついに本作への参加のみでバンドを脱退することになった。しかし、真の革新を起こした『Sweetheart Of The Rodeo』は、数えきれないほどの後進バンドが目指すマイルストーンとなり、現在でも同ジャンルにおいては最も大きな影響力を持ったレコードである。