Toto – Turn Back (1981)
Totoは本作『Turn Back』で、それまでとは趣を異にしたソリッドなハード・ロックを展開することでさらなる飛躍を目指した。シンフォニックなサウンドに変わって前面に押し出されているのはSteve Lukatherのギターであり、彼らの視点がレコーディング・スタジオを飛び出し、スタジアムのステージへ向かっていることが分かる。
陽気で軽快なリフの「Gift With A Golden Gun」はBobby Kimballの高らかなボーカルとの相性が合った素晴らしいオープニングだ。一方で「Live For Today」のイントロで響き渡るJeff Porcaroのドラムには、80年代ハード・ロックの先陣を切るような圧倒的なパワーがある。Totoらしいドラマチックな曲展開が健在な「Million Miles Away」や、美しいコーラス・ワークが感動的なバラード「If It's The Last Night」も本作の大きな聴きどころだ。
特にTotoファンに長く愛されるのが、シングル・カットもされた「Goodbye Elenore」で、ストレートなシャッフル・ビートの中にメンバーの創意が詰め込まれた名曲となった。全編で炸裂するLukatherのギター・プレイや、後半でDavid PaichとSteve Porcaroが挟み込むプログレッシブなメロディにそれは顕著である。
アルバムとシングルの売り上げこそ伸び悩んだが、『Turn Back』はTotoのまだ見ぬ魅力を示したガッツのあるアルバムだ。ポップの粋を極める次作『Toto IV』の足掛かりとしてしか捉えない人がいるとすれば、それは実にもったいない話だろう。