Ratt – Detonator (1990)
LAメタルの衰退の原因を全てKurt Cobainひとりに負わせるのは、全く無理筋な話だ。たとえそういったあらゆる外患がなかったとしても、色々なレーベルがヘア・メタル・バンドを何組も抱えるようになった80年代末ごろには、西海岸の音楽シーンはすでに酸欠状態になっていた。それはRattでさえも例外ではなく、4作目の『Reach For The Sky』は賛否が分かれたうえ、メンバーたちは寸劇じみたMTVが時代遅れになりつつあったことを自覚し始めていた。そしてCureのボーカルRobert Smithは、まるでそれを見透かすかのように「Lovin' You's A Dirty Job」のMVをTV番組の中で酷評した。
Beau Hillに代わってDesmond Childをプロデューサーに迎えて作られた『Detonator』。大きな特徴といえば、やはりゲストを積極的に起用したことで、例えばDiane Warrenは共作者として力強い「Givin' Yourself Away」を本作にもたらしている。Rattの中でも珍しいバラードとなったこのナンバーは、歌詞にも一途な愛情が満ちており、狂おしい気分にさせてくれる名曲だ。
Stephen Pearcyのカリスマを感じさせる「Shame Shame Shame」や、ファンキーなビートの「Lovin' You's A Dirty Job」のようなシングル曲を聴けば、メロディアスでダーティーな彼らの魅力が相変わらず輝いていることが分かる。また、「Hard Time」ではイントロからCrosbyとWarren DeMartiniのギターがたっぷりフィーチャーされている。他にもJon Bon Joviが参加した「Heads I Win, Tails You Lose」やソリッドなサウンドに仕上がった「Top Secret」など、本作は全編にわたって活気に満ちているのだ。
『Detonator』は確かにオリジナルRattの中で唯一プラチナに届かなかったアルバムだ。だがそれがどうしたのだ。本作のサウンドは、終わりを迎えつつあったLAメタル・シーンの最後の輝きを伝えてくれる。それはどんな歴史家の言葉より雄弁で情熱的だ。