Fats Navarro – Memorial Album (1951)
Theodore "Fats" Navarro, Jr.は、自身の初リーダー・セッションを目前に控えた1950年の7月に26歳でこの世を去った。翌年に出されたこの10インチ追悼盤は、Navarroが参加したTadd Dameronのセクステットの録音と、Howard McGheeやBud Powellとの共演をまとめたものだ。彼の死はLPレコードの登場と、それにともなうビバップ音楽の拡大の始まりの時期とちょうど重なっていた。
収録された7曲のうち、6曲が約3分とコンパクトである。それは当時がまだ長尺な演奏を録音しにくい時代だったゆえだが、その分ソロに込められたパワーはすさまじい。「52nd Street Theme」でのめまぐるしいブロウなどは、Powellのピアノ・ソロの軽やかなタッチに引けをとらない。ほかにも「The Chase」のような技巧とスピード感に富んだプレイも、Navarroの真骨頂と言える。「Lady Bird」は古きよきスイングの香りがただようナンバーで、ここではNavarroのメロディアスな才能が輝いている。
「Double Talk」は同じくトランぺッターのMcGheeと共演したセッションからの一曲で、テニスのラリーのようなテンポで鋭いソロが交わされていく。タイトルも言いえて妙な本作のハイライトだ。
スイング・バンドで培ってきた確かなテクニックはもちろん、来たるべきジャズの未来を感じさせるクールで新鮮なひらめきまでもが、23分間の中にちりばめられている。Navarroが時代の変わり目に立ち会うことができなかったのは返す返すも残念だが、その演奏が持つ輝きは今でも失われていない。