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Johnny "Guitar" Watson – Ain't That A Bitch (1976)
Johnny Watsonが初めてセルフ・プロデュースに挑んだアルバム『Ain't That A Bitch』が発表された1976年、そのジャケットとタイトルを初めて目にした人々は〈とうとうWatsonはイカレてしまったのか?〉と思った。そうだ、実際問題Watsonは本作の制作時は明らかにどうかしていた。放送禁止用語を冠したこのアルバムには、ファンクを中心にジャズやブルースといった多彩なスタイルが詰め込まれているにも拘らず、Watsonはホーン・セクションに指示らしい指示を出さず、その場のフィーリングに任せる型破りな方針を採った。
だが、Watsonのファンク・ミュージシャンとしての才能と完璧な統率力が開花したことによって、本作は破綻のない傑作に仕上がっている。「I Want To Ta-Ta You Baby」はブルースマンとしての本領がいかんなく発揮されており、「Superman Lover」では自身のピンプとしての好色なイメージを今一度踏み固めているようだ。その一方、「We're No Exception」ではジャズ・ボーカルを実に気持ちよさそうに歌い上げる。
本作ではWatsonがホーン以外のほとんどの楽器を演奏しているが、彼がファンクの文法を始めからものにしていたのは驚くべき事実である。キーボードに官能が凝縮された「Since I Met You Baby」、カリプソを巧みに取り入れた「I Need It」といった曲はまさにそうだが、やはり最高傑作はJames Brown顔負けのタイトル・トラックだ。ルーズな歌とバカげた歌詞、タイトなビートと突き刺さるようなホーン、これら全てに本物の持つすごみがある。
このアルバムの大ヒットによって大バクチに勝ったDJMレーベルは、Elton Johnに代わる稼ぎ頭を手に入れた。70年代後半のWatsonはディスコの快楽主義を体現するギタリストとして活躍した。