Hank Williams – Live At The Grand Ole Opry (1976)
1920年代はラジオがレコードよりも大きな影響力を持っていた時代で、25年から放送が開始された〈グランド・オール・オプリ〉は、数あるコンサート番組の中でもカントリー・ミュージックにおける伝統と格式をそのまま体現したような存在であった。あのElvis Presleyでさえ、「Blue Moon Of Kentucky」を歌うためにステージに上がった時、紹介者から名前をど忘れされてしまうくらいだった。
今日ではカントリーの保守性の象徴とみなされることも多い〈グランド・オール・オプリ〉。そこが輩出した最大のスターであるHank Williamsのステージは76年にMGMからLP化され、99年にはCD2枚組に拡大されて発表された。「Lovesick Blues」や「Moanin' The Blues」はWilliamsの代名詞である独自のブルー・ヨーデルが聴きもので、「Jambalaya (On The Bayou)」では陽気なケイジャン・フィドルがフィーチャーされている。オーディエンスの割れるような喝采が印象的な「Baby, We're Really In Love」は、若き日のBob Dylanが78回転のシングル盤を何度も聴きこんだ名曲中の名曲だ。
有名な「I Saw The Light」こそ入っていないものの、「The Old Country Church」や「Let The Spirit Descend」の堂々とした歌唱スタイルは、Williamsの敬虔なゴスペル・シンガーとしての側面を見せる。他にもコメディアンMinnie Pearlらとのおどけたやり取りも盛り込まれているが、Williamsの朗々としたボーカルの迫力や聴衆の熱狂は何をおいても圧倒的だ。いずれにせよ『Live At The Grand Ole Opry』は、Williamsと彼を取り巻いていたリアル・タイムのエネルギーを十二分に感じることのできる貴重な記録である。