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James Carr – You Got My Mind Messed Up (1967)

 『You Got My Mind Messed Up』にライナーを寄せたラジオDJのMagnificent Montagueは、James Carrの豊かで力強い歌声を、彼が生まれ育ったテネシー州の雄大な自然と照らし合わせるように賛美している。このディープ・サザン・ソウルの傑作では、ほとんどの曲が多くのブルースと同様に恋愛における悲しみ、そして上手くいかない苦しみを描いているに過ぎない。しかしCarrは比類のないほど真摯なアプローチでそれを歌っており、パワフルなシャウトとウィスパー・ボイス、そして時には自然な笑い声といった豊かなニュアンスを挟み込むことで、時代や国境を越える感動と共感を生み出している。
 「Pouring Water On A Drowning Man」はすがるようなCarrの叫びが、キレのいいブラスに乗った名曲である。アップ・テンポな歌が好みならば、「Coming Back To Me Baby」の跳ねるようなグルーヴや「That's What I Want To Know」のたまらないベース・ラインがおススメだ。
 マッスル・ショールズの作家Dan PennとChips Momanが共作した「The Dark End Of The Street」は心にじんわりと染みてくるバラード。このナンバーはシングル・カットされ、本作でも一、二を争う名唱の「You've Got My Mind Messed Up」とともに、ビルボードの黒人音楽チャートの10位以内に食い込んでいる。
 Carrの自然体なボーカルがソウルフルな演奏と完璧にマッチし、最高の形でアルバムになっている。トータルでは30分にも満たないが、長いソウルの歴史の中でも本作を超えるものをお目にかけることは難しいだろう。