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Yank Rachell – Mandolin Blues (1963)

 個性派がひしめくカントリー・ブルースの歴史の中で、マンドリンを武器に活躍したYank Rachellほど独自の地位を保ち続けた男はいない。Sonny Boy Williamson Iのキャリアを語る上で欠かすことのできない役割を果たし、盟友Sleepy John Estesとは、戦前はもちろん約20年の空白の後に戦後も活動を共にするなど、その長いブルース人生の中で重要な録音を数多く残している。
 本作を録音するにあたって集められたバンドTennessee Jug-Bustersは、Estesとその相棒であるHammie Nixonをはじめとして、おなじみの9弦ギターを携えたBig Joe Williams、デビュー以前の若きMike Bloomfieldという錚々たるメンツだ。マンドリン特有の奏法で見事なブルース・フィーリングを表現するRachellと、ベースの役割を果たすNixonのジャグが完璧なバランスでシャッフルする「Texas Tony」、Estesがコーラスで参加した「Shout Baby Shout」など、楽器の持つ意外性とは裏腹に、カントリー・ブルースの原風景というべきセッションを繰り広げる。
 「Move Your Hand」ではWilliamsの深みのあるボーカルのバックとして、BloomfieldのギターとRachellのマンドリンが入り乱れた賑々しいブルースを展開している。Nixonは曲の中でハープとジャグを入れ替えながら的確にして絶妙な間をとらえている。
 先進的なミュージシャンシップの持ち主であったRachellの作品の中には、エレキギターを取り入れた『Blues Mandolin Man』など、ジャグバンドの枠にとどまらないものも多い。本作は彼の中でも最もスタンダートにして聴きこみやすいアルバムといえるだろう。